異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
年の瀬を迎え、やがて明ける。
テツシバへ一旦戻って掃除をしていたメグミは、新しい年を祝う催しには混ざらなかった。乗れないというか、ジリンの屋敷でパーティがあると言われても、出席する気持ちになれない。第一にドレスがない。
ローズベルが怒った顔で言ってくれた。
『私のドレスでもいいじゃない。貸してあげるわ。だからね。なにか作ってよ』
『いまは夜会のことで頭がいっぱいです』
『無器用なんだから。いい? 出世したければもっと器用に立ち回らなくちゃだめよ。……でもメグミは、出世なんかに興味はないか』
その通りなので、笑うしかない。
人が住まなくなると家は痛むというが、大掃除をしている彼女はテツシバのところどころにその気配を見つけて少し哀しい。
――母さんがくれた抹茶は、王城へ持って行こう。そろそろ使うからね。
テツシバへ一旦戻って掃除をしていたメグミは、新しい年を祝う催しには混ざらなかった。乗れないというか、ジリンの屋敷でパーティがあると言われても、出席する気持ちになれない。第一にドレスがない。
ローズベルが怒った顔で言ってくれた。
『私のドレスでもいいじゃない。貸してあげるわ。だからね。なにか作ってよ』
『いまは夜会のことで頭がいっぱいです』
『無器用なんだから。いい? 出世したければもっと器用に立ち回らなくちゃだめよ。……でもメグミは、出世なんかに興味はないか』
その通りなので、笑うしかない。
人が住まなくなると家は痛むというが、大掃除をしている彼女はテツシバのところどころにその気配を見つけて少し哀しい。
――母さんがくれた抹茶は、王城へ持って行こう。そろそろ使うからね。