異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
慌ただしい日々は一気に過ぎて、夜会の前日になった。

メグミは、早朝から自分の持ち分のある厨房へ来た。

前日の準備は、分量を量って避けておくことからだ。数が必要ということで、わざわざ金物屋と小物屋に揃えてもらった長方形の蒸し器や、目の詰まった布巾などを確認する。

――今日はもう少しゆっくり来ても良かったんだけど。

そわそわと落ち着かず緊張が高まってきたので、朝も早くから、珍しく誰もいない厨房にいるというわけだ。早朝すぎるのかもしれない。自分でも大丈夫かと思ってしまう。まだ前日なのに――と。

「早いな、メグミ」

「ベルガモットさん。おはようございます」

ぴこんっとお辞儀をして朝の挨拶をする。

ベルガモットは、前日の夜どれほど遅くても、朝になれば厨房や調理場の点検をしている。誰かに任せてしまわないところに、彼の料理人としてのプライドを感じる。
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