異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
昼過ぎにアルマがやって来て、『掃除をしますから』と言った。しかしその声もほとんど耳に入らない。ひたすら考えていた。
かたんっと音がした。はっとして顔を上げると、棚の上に立てておいた位牌をアルマが立て直しているところだった。
「アルマ。それには触らないで、お願い」
「掃除をしていて、ちょっと手が掠ってしまっただけです。元通りにしておきますよ。……変な絵ですね。こんなの見たことがないです」
「絵……じゃないけど。そういうふうに見えるよね」
テツジが亡くなってもうすぐ三年だ。サユリに関しては、まだまだ記憶が新しい。最後に、秋になっていることから『もうすぐ栗が出るわね』と言っていた。いまはもう、大量に出回っている。
「栗……」
口に出した途端、明快なイメージが脳裏に流れる。
寒天で作る練り羊羹ではなく蒸す予定だったので、材料も道具も揃っている。これなら。
メグミは、ばんっと立ち上がって部屋から走り出てゆく。
「ちょっ、メグミさんっ」
アルマの声を後ろに聞きながら、ベルガモットがいる厨房へ向かって全速力で廊下を走った。
かたんっと音がした。はっとして顔を上げると、棚の上に立てておいた位牌をアルマが立て直しているところだった。
「アルマ。それには触らないで、お願い」
「掃除をしていて、ちょっと手が掠ってしまっただけです。元通りにしておきますよ。……変な絵ですね。こんなの見たことがないです」
「絵……じゃないけど。そういうふうに見えるよね」
テツジが亡くなってもうすぐ三年だ。サユリに関しては、まだまだ記憶が新しい。最後に、秋になっていることから『もうすぐ栗が出るわね』と言っていた。いまはもう、大量に出回っている。
「栗……」
口に出した途端、明快なイメージが脳裏に流れる。
寒天で作る練り羊羹ではなく蒸す予定だったので、材料も道具も揃っている。これなら。
メグミは、ばんっと立ち上がって部屋から走り出てゆく。
「ちょっ、メグミさんっ」
アルマの声を後ろに聞きながら、ベルガモットがいる厨房へ向かって全速力で廊下を走った。