異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
そしてだんごを作り始める。

――だんごを作るときって、いつも、こちらへ来たころを思い出すわね……。大変だったなぁ……。

みたらしだんごが、この世界での和菓子屋“テツシバ”の最初の一歩だった。

混ぜて捏ねてお湯で茹でて生地を作り、丸める。竹の串は大通りの大きな店が扱っていた。テツジが値段の交渉をして、失敗分でもいいからと譲ってもらった。それ以来の付き合いだ。店の中で形を整えて、四個刺すのがテツシバの基本だった。

三色だんごは春物だが、テツシバは一年を通して作る。三色だんごは三個、みたらしは四個を基本にしている。

丸めて刺してゆく。単調でもなかなか楽しい作業なので、このあたりで思わず祖母が口ずさんでいた歌の変形が出てしまう。

「だんご、だんご、だんご四姉妹~。丸みが足りない長女。長女。甘えったれーの四女、四女……」

だんごを次々に形作り、まずは積んで置いておく。火を入れた四角い耐熱箱の上に網をセットして焼くのは、もう少し先だ。
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