異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
「手伝う」
メグミは、数人で作業ができる広く頑丈な調理台の端に座っていた。角を挟んだ隣に椅子を持ってきて座るコンラートへ、彼女は呆れたような視線を向ける。
「手伝いは要りません。これは私の仕事です。手伝ってもらうのは反則になります」
それも国王に手伝ってもらうなどと、他に知れたらどういう噂になることか。
第一ベルガモットは『一人で』と言った。ここで手伝ってもらったのでは、高い位置にある鳶色の眼を薄く細めて、きっと軽蔑のまなざしを投げてくるに違いない。
「少しだけだ」
彼は山となった栗に手を伸ばしてきたが、メグミはくっと睨んで怒る。この段階で、コンラートが国王ということは意識から滑り落ちていたかもしれない。寒いのだ。
「私の仕事を取り上げないでください。陛下には、国王という大切なお仕事があるではありませんか。明日は他国の賓客をたくさん出迎えねばならないのでしょう? 昼頃には気の早い客人たちが来ると聞いています」
「一晩くらいの睡眠不足で弱るような身体の鍛え方はしていないぞ」
「いまは、眠るのが陛下のお仕事です」
その後は、しっかり口を噤んで黙々と栗の皮むきを続けてゆく。
コンラートは『頑固だな』と呟いて、しぶしぶ引き下がった。椅子を片付けて、第二調理場から出てゆく。
「無理はするなよ」
最後の一言には笑って返した。心配してもらえるのはありがたいことだ。
メグミは、数人で作業ができる広く頑丈な調理台の端に座っていた。角を挟んだ隣に椅子を持ってきて座るコンラートへ、彼女は呆れたような視線を向ける。
「手伝いは要りません。これは私の仕事です。手伝ってもらうのは反則になります」
それも国王に手伝ってもらうなどと、他に知れたらどういう噂になることか。
第一ベルガモットは『一人で』と言った。ここで手伝ってもらったのでは、高い位置にある鳶色の眼を薄く細めて、きっと軽蔑のまなざしを投げてくるに違いない。
「少しだけだ」
彼は山となった栗に手を伸ばしてきたが、メグミはくっと睨んで怒る。この段階で、コンラートが国王ということは意識から滑り落ちていたかもしれない。寒いのだ。
「私の仕事を取り上げないでください。陛下には、国王という大切なお仕事があるではありませんか。明日は他国の賓客をたくさん出迎えねばならないのでしょう? 昼頃には気の早い客人たちが来ると聞いています」
「一晩くらいの睡眠不足で弱るような身体の鍛え方はしていないぞ」
「いまは、眠るのが陛下のお仕事です」
その後は、しっかり口を噤んで黙々と栗の皮むきを続けてゆく。
コンラートは『頑固だな』と呟いて、しぶしぶ引き下がった。椅子を片付けて、第二調理場から出てゆく。
「無理はするなよ」
最後の一言には笑って返した。心配してもらえるのはありがたいことだ。