異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
その部屋にはもう一人いた。アルマだ。
「アルマ。お前はもっとやれるな。あの小娘を城から追い払え」
奥の方から出てきたアルマは、グレイの前に立つと頭を下げる。
「ですが陛下のお気にいりなので、手が出し難いのです」
「自分から出てゆくように仕向けろ。そうだな、何か大切にしているものがあれば壊してしまえ。痛めつけるんだ。なにかないのか?」
「……そういえば、板に描いた絵をとても大事にしていました」
絵にしか見えない。板に描いてあり、巨匠の作とも思われないし売るほどの価値も見いだせない。
「では、それだ。できるな」
「もちろんできます。実行しますから、グレイ様。お約束をお忘れなく」
「弟か。あの娘がいなくなれば菓子職人の席が一つ空く。お前の弟を推挙してやればいいのだろう? 案外、ベルガモットの後任も取れるかもしれんぞ」
ベルガモットは料理長だから、新人にその役目が回るわけがない。それでもアルマはその言葉にすがりたかった。絞り出すような声で訴える。
「弟は、メグミが受かった試験の最終三回目で落とされて、絶望したあげく家から一歩も出なくなってしまいました。でも公爵閣下がひき上げてくだされば、きっと立ち直れます」
「ふむ。そうだな。弟のためにも、やれ」
「アルマ。お前はもっとやれるな。あの小娘を城から追い払え」
奥の方から出てきたアルマは、グレイの前に立つと頭を下げる。
「ですが陛下のお気にいりなので、手が出し難いのです」
「自分から出てゆくように仕向けろ。そうだな、何か大切にしているものがあれば壊してしまえ。痛めつけるんだ。なにかないのか?」
「……そういえば、板に描いた絵をとても大事にしていました」
絵にしか見えない。板に描いてあり、巨匠の作とも思われないし売るほどの価値も見いだせない。
「では、それだ。できるな」
「もちろんできます。実行しますから、グレイ様。お約束をお忘れなく」
「弟か。あの娘がいなくなれば菓子職人の席が一つ空く。お前の弟を推挙してやればいいのだろう? 案外、ベルガモットの後任も取れるかもしれんぞ」
ベルガモットは料理長だから、新人にその役目が回るわけがない。それでもアルマはその言葉にすがりたかった。絞り出すような声で訴える。
「弟は、メグミが受かった試験の最終三回目で落とされて、絶望したあげく家から一歩も出なくなってしまいました。でも公爵閣下がひき上げてくだされば、きっと立ち直れます」
「ふむ。そうだな。弟のためにも、やれ」