異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
アルマはグレイに礼を取ってからその居室から出た。廊下を歩きながら弟の顔を思い浮かべる。
早くに両親が亡くなって以来、二人きりで生きてきた。弟がパティシエになりたいと言ったので、アルマはひたすら働いて支えた。

弟をなんとかしてやりたいと願う姉の心情を、グレイに利用されているのは分かっていても、他に方法が見つからない。

「やるわ」

言葉にするのは決心を鈍らせないためだ。
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