異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
午餐で和菓子を提供してから一旦部屋へ戻ってきたメグミは、廊下の窓の外に見える中庭を上から眺める。気のせいか、木々に新しい芽が見えたように思った。

――もうすぐ、父さんの一周忌……。

日々が過ぎてゆくのが早い。

――テツシバの様子を見に行きたいな。

年末の掃除のときに行ったきりだ。あの店は彼女が守るべきものなのに、このところすっかり放置してしまっている。

部屋へ入ると、ふと違和感を覚えた。ぐるりと見回せば、あるべきものがない。

――位牌が……!

真っ青になった彼女は、我を忘れて部屋の中を探し始めた。
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