異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
終章
春祭りも終わり初夏になった。
メグミは菊の花を模った生菓子を作り上げ、その日は午前中だけテツシバを休んで墓地まで行くと、墓碑が立っている場所にそっと置いた。
――また小豆を植えたよ。
秋にはたくさん採れるといいのだが、実りが目の前に現れない限り不安がある。
しゃがんで手を合わせていたら、すぐ隣にいきなりコンラートが現れた。メグミは彼を見上げてふぅとわざとらしくため息を吐く。
「どうして私が出かけたのが分かるのですか。おまけに場所まで。……もしかして、また誰かに見張らせているんですか?」
馬車屋にはもう彼女の様子を見張る、というか見守る者はいないはずだが、もっと別なところに配置されたかもしれない。
メグミは立ってコンラートに並んだ。
「気にするな」
「気になりますよ、普通に」
「気が付かないのならいいだろ。な、メグ。これはもう食べてはダメか?」
供え物とした菊の花の生菓子を指す。この辺りは、自分の中にある前の世界の宗教的感覚とはまったく違う。
ここで朽ち果てるより、食べてもらった方が菓子も喜ぶだろうとメグミは頷く。コンラートは手で持って一気に口に入れた。
それを眺めながら、メグミは大きく笑って空を見上げる。
メグミは菊の花を模った生菓子を作り上げ、その日は午前中だけテツシバを休んで墓地まで行くと、墓碑が立っている場所にそっと置いた。
――また小豆を植えたよ。
秋にはたくさん採れるといいのだが、実りが目の前に現れない限り不安がある。
しゃがんで手を合わせていたら、すぐ隣にいきなりコンラートが現れた。メグミは彼を見上げてふぅとわざとらしくため息を吐く。
「どうして私が出かけたのが分かるのですか。おまけに場所まで。……もしかして、また誰かに見張らせているんですか?」
馬車屋にはもう彼女の様子を見張る、というか見守る者はいないはずだが、もっと別なところに配置されたかもしれない。
メグミは立ってコンラートに並んだ。
「気にするな」
「気になりますよ、普通に」
「気が付かないのならいいだろ。な、メグ。これはもう食べてはダメか?」
供え物とした菊の花の生菓子を指す。この辺りは、自分の中にある前の世界の宗教的感覚とはまったく違う。
ここで朽ち果てるより、食べてもらった方が菓子も喜ぶだろうとメグミは頷く。コンラートは手で持って一気に口に入れた。
それを眺めながら、メグミは大きく笑って空を見上げる。