異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
四日過ぎて、次の薬をもらうためにメグミは通りの端にある医院へ出かけた。

サユリは起き上がっているが、店に出ても、メグミはサユリがいつも担当している蒸した菓子作りに手を出すことは許さない。

娘の頑固さを理解しているのか、それとも動くと心臓が早打ちをするので苦しいからなのか、サユリはメグミの言う通り一日の大半をベッドの上で過ごしている。

体を休めるだけでなく、眠っているときも多くなっていた。

「じゃ、行ってくるから」

医院から帰ったら暖簾を出す予定だ。サユリはベッドの上で半身を起き上がらせてメグミに手を振っている。笑顔だが、ごまかされてはならない。

ひとり残しているのが心配でも、薬を取りに行くしかないのでメグミはテツシバを出た。通りを歩いて行けば、両側にずらりと並ぶ多くの店で、店長も店員もその日の用意をしている。朝はどの店も忙しい。
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