異世界にトリップしたら、黒獣王の専属菓子職人になりました
この道は表通りではないが、王都が誇る表通りの大きな店に負けない店舗が連なっている。国外から来る商人たちが、大通りばかりでなくこちらへも来るようになって、ますます繁栄の兆しが見えていた。

しかし、中心からさらに一歩外れると、犯罪者と財政破綻者が流れ着く下町がある。この国は、富める者と貧しい者の差が激しい。しかもその差は広がる傾向を見せていた。

治世者がヴェルム王国の先行きを考えるなら、まず下支えをする手段を考えるべきだろう。

――だけど、やってはいるんだよね。水路とかの事業を国中で進めているみたいだし、補助金とか? ……新しい産業の種、見つかったのかな。

メグミも、薬代のためにもっと手を広げる必要があった。こうなると、以前提示されたジリン公爵の話は魅力的だ。

――公爵の頼みごと、というのを聞いてみようかな。

テツシバをしばらく閉めることになるかもしれないが、サユリの病気のためにそうするならテツジも納得してくれるだろう。
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