先輩、これって恋ですか?
久遠先輩の存在が気になりながらも、お弁当の蓋を開けて小さく“いただきます”そう呟くと──
「うわ、うまそう!」
先輩は前のめりになって、お弁当をまじまじと見る。
「そ…んなに、見ないでください…」
「なんで? だってうまそうだもん。それ、自分で作ってんの?」
「そう、ですけど……」
「春香ちゃんは料理得意なんだね」
なんだか自分が会話の中心にいるような気がして恥ずかしくなり、慌てて俯く。
するとそれに先輩は気づいたのか目の前から、ふはっと笑い声が漏れた。
「見すぎだったよね、俺」
俯くわたしの頭を軽く撫でた。
「ほら。お弁当食べな」
「…。」
「次はそんなガン見しないって。大丈夫」
そのあとは、何事もなかったかのようにパンを頬張る先輩。
強引なところはあるものの、一定の距離を保ってくれているような気がして、それだけでほんの少しホッとした。