先輩、これって恋ですか?
危うくこの雰囲気に飲み込まれそうになって、一瞬感覚がおかしくなった。
先輩の威力って恐ろしい…。
「いい加減…離して、くださいっ…!」
このままだと自分が自分じゃなくなってしまいそうで胸板をトントンと押し返すけど、全くびくともしなくて
普段へらへらしてばかりだから油断してたけど、やっぱり先輩も男の人なんだ。
─と、意識すると、次第にそれは全身に感染していき、鼓動があちこちから聞こえてくる。
ドキ、 ドキ、 ドキ、 ドキ───…
……先輩にも聞こえてるかな…。もしそうだとしたら、恥ずかしいな。
ジタバタともがいてどうにか解放してもらおうと試みるけど先輩はなかなか離してくれなくて、
それどころかわたしの後頭部に手を添えて、少しだけ頭を寄せた。
「お願い、春香ちゃん。少しの間だけ、じっとして聞いて」
耳にかかる微かな吐息、低音ボイスが脳に直接響いてピリピリと痺れが走り、全身が金縛りにあったみたいに硬直する。