先輩、これって恋ですか?


「え、…あの、ちょ……っ」

“待ってください”そう言おうとした時、ほんとに数え始める先輩。


「10…9、8───…」

カウントダウンが始まり、さらに焦るわたしを見て、楽しそうに笑っている先輩は本物の悪魔みたいに見えた。


「5、4、3───…」

ゼロが近づくたびにバクバクと焦り、もう後がないと悟ったわたしは、ギュッと目を瞑り


「な、名前で……呼び、ますから。」


最悪な選択だと分かっていながらも、もう一つの選択よりは全然マシだと自分を言い聞かせる。

まるで先輩は、そうなることを予想していたといった顔ぶりをしていた。


「……意地悪、だ……。」


わたしがボソッと言った言葉に反応して「何かいった?」と、首を傾ける先輩に「い、いえ…。」と小さく答えた。


この状況から逃げ出したくても目の前でニコリと笑っている先輩から逃げることなんて不可能で。

まるでヘビに睨まれたカエルの気分はこんなもんか、と重たいため息を一つ漏らす。
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