先輩、これって恋ですか?


「聞こえたでしょ?」

「…え、……いや、でも…」


先輩がドキドキするはずがない。

だって、あの智紘先輩だもん。


来るもの拒まずの先輩ならこんなこともお手の物で、誰に対しても緊張するはずがない。

それなのにこの音は一体……


「……ほんとに、智紘先輩ですか?」

「えー。そこを疑う?」

「いや、だって。どう考えても……」


「俺が女の子にドキドキするはずない、って?」


考えていることをそのまま言い当てられて、慌てて驚いていると、「あ、図星だ」そう言って、ハハハーっと笑う先輩。


「春香ちゃん分かりやすいなぁ」

「……先輩は分かりにくい、です」


さっきの鼓動の音はほんとに先輩のものだったのかさえ疑わしくなってしまう。

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