先輩、これって恋ですか?


「そんなことするわけないじゃん」

そう言って、笑った。


「俺は思ったことを素直に言ったんだよ。……まぁ、すぐには無理だと思うけど。俺、諦めるつもりないから」


その時の表情は、真剣そのものだった。

いつも俯いてばかりで人の顔なんてほとんど見ないわたしが、その時だけはその表情から目を逸らすことができなかった。


「とりあえず名前だけでも覚えてよ。俺、久遠智紘。よろしくね」


手を差し伸べられるけど、それをどう受け止めたらいいのか分からなくて、俯く。


「こういう時は握り返してくれると嬉しいんだけどなぁ?」

「……わ、わたし、友達になるなんて……まだ、言ってませんから……。」


先輩が勝手に話を進めてるだけで……


「じゃあ、春香ちゃんがいいって言うまで待ってあげるよ」

「ど、どれだけ待たれようと無理なものは無理です……って、え? な、なんで わたしの名前知って……」
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