先輩、これって恋ですか?
────キーンコーンカーンコーン…
「あ。予鈴鳴ったから、俺そろそろ行くね」
ばいばいー、と、わたしに手を振り颯爽と去って行く久遠先輩。
一気に静まり返る中庭。
いつもこれが平気だったはずなのに、慣れていたはずなのに、初めて来た頃に戻ったような感覚があった。
それは間違いなく久遠先輩が今までここにいたせいだった。
「…勝手な人、だなぁ……。」
まるでテリトリーを乱されたような……って、わたしが先輩の居場所を勝手に占領しちゃってたから、怒って、それがどんなやつなのか確かめたかったとか……?
で、できればあんまり関わりたくないんだけどなぁ……。
中庭にある大きな桜の木が風に揺れ、花びらがふわーっと舞い、その中のうちの一つがわたしのスカートの上に乗っかった。
それを摘み上げて顔に近づけると、ほんのり桜の匂いがした────