Drowse



12/24☂
〇〇〇〇●〇〇〇〇
〇〇〇〇〇〇〇〇〇
●〇〇〇〇〇〇〇



書かれていたのは12/24という日付に傘マークと、二十六個の〇。

更にその下には答えを書き込む為らしき二本のアンダーラインと、床には白いチョークが転がっていた。

26個の〇は上二行は九個ずつ、一番下の行だけ八個書かれており、そのうち二個が『●』と黒く塗り潰されている。

僕の直感が、これを解けばここから脱出できると告げていた。

ここは僕が産み出した幻想の世界なのだ。だからきっとこの予想は間違っていないだろう。

だが、パッと見ただけではすぐに解けそうな問題には見えなかった。

日付はクリスマスイブだけど、それと関連する様なものがどこにも見当たらない。そもそも傘マークが今の天気を表しているのなら、単純に『今日の日付』という可能性もある。

問題はその下の大量の〇マークだった。これは一体何を表して――

「……真冬うううううッ! 早く来なさいぃぃぃぃっ! 早く、早くしないと――」

「ア、アイラ⁉」



ドンドンッ! と再び『彼女』が喚き散らしながらドアを乱暴に叩き、蹴りつけ始めた。

もはや初めて出会ったときの様な面影はどこにもなくなってしまった――ただ僕を捕まえることだけしか頭にないクリーチャーだ。

鈴の音も更に激しさを増している。僕は双方からくる雑音を懸命にシャットアウトしながら暗号を必死に反芻する。

二十六個の〇が意味するもの――その配列を見つめる内に僕はあることに気付いて部屋の床を見渡す。

やっぱり……数えてみると、リンゴがたくさん入っている袋も全部で二十六個だ。

そしてその内の二つが黒く塗り潰された●ということは……

僕は暗号の●に対応した位置のリンゴの袋を一つ掴み、中からリンゴを次々と取り出す。

時間はかかったが、予想通り中から明らかに普通ではないリンゴが出てきた。表面に鋭利な刃物で『s』と刻まれたリンゴだ。

ドン、ドガッ! とドアが不気味に軋み始めた。もうあまり時間がない!

僕は続いて二つ目の●に対応したリンゴ袋を掴み、手当たり次第に取り出して調べる。そして遂に、今度は『e』と書かれたリンゴを見つけ出した。

これで必要な情報は揃ったはずだ。

『s』と『e』と刻まれたリンゴ。

確証はないが、12/24という今日の日付と傘のマーク。



――いや……ダメだ。情報は揃っているはずなのに何も思い浮かばない!
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