Drowse
ガンッ! ガシャンッ!

リーン! リーン! リーン!

けたたましいドアの破壊音と、サイレンの様に響く鈴の大合唱。

今にも気が狂いそうな惨状の中、必死に知恵を絞っていた僕はとあることに気付く。

そもそもどうして丸の数は二十六個なんだ?

どうして二つの●からは『s』と『e』が出てきたんだ?

最初の『e』が出てきたリンゴは一番上の列の真ん中の袋にあった。二つ目の『s』が入ったリンゴの袋は一番左下の位置。

これが意味するところはつまり――

「――アルファベットか!」



僕が叫んだ瞬間、壁に更に文字が浮かび上がった。



w
D
r
o



現れたのは四つのアルファベット。

Dだけ大文字ということはこれが頭文字だろう。つまりアナグラムだ。

僕は床に手当たり次第にそれを並び替えながら書き、英単語を弾き出す。



『Drow(時雨)』



時雨――秋から冬の初めにかけて降る小雨のことだ。

つまり12/24とは今日の日付かどうかは関係ない。冬の初頭ということを表していたのだ。

そしてそこにリンゴから見つけた『s』と『e』を足せば――

『まふゆううううッ!』



バタンッ! ドアが遂に破られて倒れる音がする。

僕はチョークを拾い上げると、迫りくるアイラだった『何か』の前で咄嗟に答えを書き込んだ。



『Drowse(微睡む)』



次の瞬間――壁に無数の亀裂が入り弾け飛んだ。

亀裂は止まることなく、ログハウス全体に際限なく広がっていく。

「え……? ちょっと……!」



このままでは家全体が崩壊して下敷きになってしまう……!

僕が逃げ出す間もなく、ログハウスは稲妻のような亀裂に覆われて――

「真冬! 危ない!」



刹那――アイラが僕に飛びつくと共に、ログハウスは轟音と共に無数の破片となって崩壊した。
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