君の子守唄
咲への気持ちを、兄貴に気づかれないように

二人の恋を応援した。

2度の失恋で、恋に臆病になっている咲は

気づいて良い場面ですら、心の目を閉じて

見ないようにしていたから。

俺は兄貴と自分と咲の思いに、いつもイライラしていた。

いっそ、二人から離れてしまおうかと思ったところで………

兄貴と咲の思いは届いた。

やれやれと………自分の気持ちに完全に蓋をして

二人の側にいることを決心した頃。

家を出てからずっと音信不通だった長男の会社に

兄貴と探偵仲間の洋介の3人で

勤めることになった。

俺は、それを期に愛称の『ささ』を止めて

『彰人』と呼んでもらうことにした。

お母さんを苦しめるこの名前で呼ばれることに抵抗をもち

母親の姓である笹山の笹をとって

『ささ』と呼んでもらっていたが………

せめて、咲には名前で呼んで欲しいと思い

親父の会社に入る前に、彰人に戻したのだ。

「彰兄、どうかなぁ?」

ジュンブライドの花嫁は……………

俺のホントの妹になって

ウエディングドレスの裾を翻して、回って見せる。

「あぁ、キレイなドレスだ。」

俺のからかいに、プクリと頬を膨らませ

「圭ちゃん、彰兄が意地悪言う~」と

抗議の声をあげている。



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