君の子守唄
洋介に聞いていた寧々は………

異常に良い子だった。

いつもニコニコ、素直に『はい。』と返事をする。

『欲しい。』『食べたい。』と駄々を捏ねることもなければ。

泣きわめいたり、癇癪を起こすこともない。

いわゆる、手の掛からない子だった。

育てやすいと単純に思えると楽なのだが…………。

自分達自身、辛い思いや悲しい思いをしてきた大人には………

その事こそが、不安材料だ。

素直に『嫌だ』と言わせたい。

『イタズラしないの。』と注意する程、自分を出して欲しい。

これは

洋介と洋介のおばさん、俺や兄貴の希望だ。

水族館という沢山の人がいる環境で

『自分らしく』

『子供らしく』

『純粋な寧々』でいるのなら………

俺達の寧々と過ごした時間は………正しかったのかもな。

子育てを知らない男三人が

寧々という女の子とどう関わったら良いのか

手探りの日々だったから。
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