君の子守唄
月日が過ぎると………

俺はこの家のお荷物で

二人男の子と同じように『お坊っちゃま』と呼ばれているが

誰も坊っちゃんとして見ていないと言うことだ。

声を出せず、泣くことすらまともに出来ない俺は

お手伝い達の、格好のいじめのターゲットで………。

水を溢したと言って、頭からかけられたり

鍵を開け忘れたと言って閉じ込められたり………

一番酷かったのは

畑に野菜を取りに行くと連れ出され

置き去りにされてしまった時だ。

声が出ない俺は、家の場所を聞くことすら出来ず

ただひたすら歩いていた。

そんな俺を、いつも探し庇ってくれたのが

あの日『大丈夫か?』と聞いた兄貴だった。

3つ違いの兄貴は、幼稚園に通い

数年すると、学校に通い初め…………

中々一緒にいる時間はなかったが。

それでも気にかけ、時間が空くと直ぐに側に置いてくれていた。

俺もいじめられる原因が実は母にあり

自分は招かざる人間だと分かってからは………

今のお母さんには、申し訳ない思いで………恨みなど思いもしなかった。

それでも辛い時はあり

兄貴が庇い、抗議してくれると………

一人ではないんだと、嬉しく思っていた。
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