世界で一番美しいプレゼント

目を覚ました刹那、吉岡風香（よしおかふうか）は泣きながら苦しげな呼吸を繰り返す。胸はキリキリと痛み、目の前は少しずつ暗闇に支配されていった。

風香の頭を巡るのは、先ほどまで見ていた悪夢。数年前から一度も会っていない母から言われた暴言の数々の夢が風香を襲っていく。

『何でこんな問題もできないんだよ！この大馬鹿娘！！』

『お前なんか消えろ！！死ね！！』

『あんたなんか産むんじゃなかった！！』

目覚ましが鳴り響いても、ベッドから風香は動くことができない。ただ体を震わせ、全力で走った後のように荒い呼吸を繰り返すだけだ。

「風香！大丈夫か？」

部屋から出てこない風香を心配して、父が部屋へと入って来る。そして、過呼吸を起こしている風香を見て驚く。

父は風香の背中をさすり、「大丈夫、大丈夫だよ」と優しく声をかける。祖父母も部屋に入って来て、「風香！」と心配げな目を向けた。

しばらく背中をさすってもらうと、風香は少しずつ落ち着いてきた。やがて呼吸は元に戻り、ゆっくり風香は体を起こす。