世界で一番美しいプレゼント
こころの家とは、風香が両親と離婚した頃から通い出した場所だ。

若者の自殺が増えているのが社会問題となり、政府はこころの家というものを作った。それは、いじめや虐待などで心に深い傷を負った人たちが集い自由に過ごす場所だ。

カウンセラーの先生と話をしたり、同じように傷を負った同世代の人と遊んだりすることで少しでも心を軽くするというものだ。

風香もこころの家で過ごすうちに、少しは過去と向き合えるようになったかもしれない。しかし、傷は癒えないままだ。

少しうつむく風香だったが、父と祖父母は楽しく話しながら朝ご飯を食べている。

「そういえば、もうすぐで風香の誕生日だね。何かほしいものはある?」

風香の隣に座る祖父が訊ねる。風香は「あっ!」と呟く。十月二十三日は風香の十五歳の誕生日だ。しかし、考えてみてもほしいものはすぐには思いつかない。

「今は特にはないかな」

「そうか。ほしいものができたら、すぐにおじいちゃんに言いなさい」

「うん!」
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