世界で一番美しいプレゼント
友達のお兄さんは自閉症を持っている。そして、こころの家に通っていると友達は言っていた。

こころの家には様々な人が集う。心に傷を抱えた人はもちろん、障害を持った人も通っていることは珍しくはない。風香はよく知っている。

写真の中のお兄さんは、山登りをこころの家のみんなと登っている。その顔はとても楽しそうだ。そのお兄さんを見て、友達は馬鹿にしたような笑い声を上げる。

「こころの家ってさ、ただ遊んでるだけじゃん!逆に羨まし〜」

「でもさ、障害者とか集まってるでしょ?そんなのと一緒にされるとかマジ無理だわ」

「そもそも、こんなとこに通わないといけないってさどんだけ病んでんの?」

友達のこころの家を馬鹿にした言葉に、風香はうつむき、今にも泣いてしまいそうなのを堪える。過呼吸を起こしてしまいそうで、怖くなった。

「ごめん!ちょっと家に忘れ物したみたい。先に行ってて」

耐えられなくなり、風香は咄嗟にそう言った。友達は「わかった」と笑い、歩いていく。

風香は来た道を引き返し、裏路地へと入った。そこは薄暗く、誰もいない。
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