運命の赤い糸の先には…
私は思い出した。確か、昼休みにぶつかった彼が持っていたのがこの本だったような気がする。何となく気になってあらすじを見てみる。

「へぇ、恋愛ものかぁ。読んでみようかな。」

今日の一冊はこの本に決めた。椅子に座って早速本を広げる。

内気で真面目な女子高生の恋の話。ひょんな事から好きになってしまったのは隣のクラスの男の子。ヤンチャ系の彼は、いつも怖そうなお友達と一緒にいて、私とは別世界の人だった。少しでも彼の世界に近づきたくて私は・・・。

私は本の世界に入り込み、周りの音が一切聞こえないくらい集中して読んでいる。

「はぁ、読み終わったぁ。」

読み終えた本をパタンと閉じた。どのくらいの時間が経ったのだろうか。私は時間を確認しようとカバンから携帯を取り出そうとしたが、ふと気付いた。何だか目頭が熱い。

「感情性豊かなんだね。」

私の目の前にはニッコリ微笑む男性が座っている。外見は爽やかなイケメン風のその彼はそっと私の前にハンカチを差し出してきた。

ハンカチ？何で？

そう思いながら思わず彼の顔をじぃっと見る。すると、彼は笑顔で自分の目を指差した。私も自分の目を触ってみる。

「あれ？私・・泣いてる？」

本に感動してしまったのか、結構豪快に泣いていることに気づき、私は急に恥ずかしくなって慌てて彼のハンカチで涙を拭いた。

「そろそろ閉館の時間だよ。」

「え、もうそんな時間？」

私は立ち上がり、急いで本を元の場所へ戻す。そしてさっき座っていた席を見るが、彼はすでにいなかった。

「帰っちゃったか。」

私は彼のハンカチをぎゅっと握りしめ、図書館を後にした。
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