お前にはかなわない
「おはよう。あんまりはしゃぎすぎんなよ。」
こんなことを言うにもわけがある。
こいつは昔からどこか抜けてて、ここら辺では一番と言っていいほどのドジっ子だから。
「おっと!」
「ほら言わんこっちゃない。」
俺はさっと手を伸ばし陽向の腕を掴んだ。
「ごめんごめん!ほんとだよね。」
そう言って申し訳なさそうな顔をする陽向。
そんな顔させたいわけじゃないのに、いつだって悲しい顔をさせてばかりだ。
俺は優しく陽向の頭に手を乗せ、「気をつけろよ。」そう一言だけ言った。
たったそれだけで陽向の顔はぱっと明るくなりこれでもかってくらいの笑顔を向けてくる。