ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



もちろんそのチャンスはちゃんとあった

俺が彼女の“お兄ちゃん”という存在から
“他人” という存在に変わった時
俺は確かに伶菜のココロだけじゃなくて
カラダをも求めようとした

けれどその時は
伶菜が自分の腕の中にすっぽりと収まった瞬間に
自分のココロが満たされてしまって


彼女のカラダの奥深くのぬくもりまで求めてしまうのは
男の欲望にただ流されているんじゃないかとか
あまりにも自分の気持ちが軽すぎるんじゃないかとか
そう思ってしまって

だから俺は
自分の腕の中で眠る伶菜の穏やかな時間を守ることだけを考えた

でも今から思うと
伶菜がまだ臨床心理士ではなかったあの時に
難しい心理の専門知識とかに頭を占有されていなかったあの時に

俺は伶菜のココロはもちろん
それだけじゃなくて
彼女の全てに触れておくべきだった


彼女が臨床心理士になった今
ふたりで肌を触れ合っている時

伶菜が・・・

彼女自身もおそらく気が付いていないぐらいの
ほんの少しだけのぞかせる躊躇いに
俺は気がつかずにはいられなくて

俺は彼女の奥深くの温もりにまで
踏み込めないままでいるんだ


でも、もう、そろそろ俺も限界


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