ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活


カウンセリングの原則は
セラピストがあれこれ指示するような言葉かけはできるだけしてはならない


でも、問いかけられたら、答えないわけにはいかない


「ダメでもいいじゃないですか?』

「・・・ダメでも、いいの?」

「子は親を育てる・・・だから育ててもらえばいいのではないでしょうか?お子さんに。」


今のアナタで大丈夫
焦らなくても大丈夫

たったひとりだけど子育てを経験している私も
全て完璧にやらなきゃダメな母親
そういう想いを抱いたから

だから
大丈夫という言葉が
一番安心する

その一言で
彼女はようやくほっとした表情を浮かべた。


赤ちゃんのお世話が上手くできないとか
夫に気を遣わせて申し訳ないとか
姑に二人目を早く産めと急かされるとか

そういう不安はすぐに解消してあげられないけれど
そういう具体的なことはこれから一緒に考えていけばいい



「ありがとうございます。聴いてもらえて、なんかほっとしました。」


渡辺さんのその一言で私は
自分が行ったカウンセリングの方向性を間違えていなかったと確信した。

けれども私の中ではひとつだけ
ひっかかったことが残ってしまった。



それは、彼女のお姑さんが言ったという
高齢出産における先天性疾患を有する児の出生のリスクが高まるというコト

これは統計学的にもそれを証明するデータも一部存在している
遺伝相談室に所蔵されている文献でもそれを見つけていた私

それだけではなく

高齢出産以外にも先天性心臓病児を産んだ母親が再び先天性心疾患を有する児を産む可能性は健常児を産んだ母親よりも高いというデータも


それは先天性心疾患を有する祐希を産んだ私にも充分当てはまること
そのデータを見つけた時には自分でもそう自覚した


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