ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
Hiei's eye カルテ12:midnight runaway midnight chaser
【Hiei's eye カルテ12:midnight runaway midnight chaser】
ピッ。
すっかり冷え込んでいた夜の空気に体を震わせながら、手元のリモコンで愛車のドアロックを解除した。
夜11時。
夜露でうっすら湿ったフロントガラスから覗いた外の景色。
ほんの少し欠けているけれどほぼ満月に近い空は明るかった。
人通りもすっかり少なくなっていて。
月明かりによってできた影はたったひとつ。
マンションの駐車場から出かけようとしていたのはたったひとり・・・・俺だけだった。
『何、やってるんだろうな、俺。』
激しい雷でも鳴り響けば・・・
その音を怖がってリビングの隅に小さくしゃがみ込むであろう伶菜のことが気になって仕方がなくなって、今すぐにでも家に戻るのに
いくら空を眺めてもそれらしき雲が見当たらなかった。
家に戻る言い訳が見つからなかった俺は溜息をつきながらエンジンをかける。
『こうするしかない、、、んだ。』
病院に向わなくてはならないことを伶菜に告げた時。
言葉では言わないけれどいつも以上に寂しそうな顔をした彼女に危うくキスしそうになったけれど
多分、今度こそ自分を止められない
・・・・そう直感した。
だからなんとか踏み留まって
キスを
唇ではなく額へ落とした。
・・・・俺にはやらなきゃいけないことがあることを改めて思い知ったから
だからもう・・・・戻ることはできない
ようやく踏ん切りがついた俺は
やや冷たいハンドルをグイッと握り締め、アクセルを踏んだ。
犬の吠える声が聞こえる細い路地を抜け
大通りに出るとそれなりに車の往来はあった。
それでも昼間よりもそれらのスピードはかなり速い。
何かを考えられる気力もない俺は
前を走るテールランプにぼんやり目をやりながら、その流れに乗って車を走らせた。