ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



でも伶菜の涙でなんとか踏みとどまった

“彼女は俺達の未来とか将来とかそんなことに対して怖れているのではないか?”
なんとなくそんな考えが頭を過ぎったから・・・

そして美咲のコールで俺はようやく目が醒めた

それによって自分がしなくてはならないことがより鮮明になったんだ



『大事な時、だよな。』


俺と伶菜

俺達はもう
お互いにスキという気持ちだけじゃ
お互いをただ求め合うだけじゃ
前に進めない

それまでもがはっきりしたんだ

だから伶菜の傍にいてやりたいという自分の気持ちを誤魔化してまでも
こんな夜中に彼女をあの部屋に残したままここへ来た

それなのに



「日詠先生、もしかして伶菜さんに今日のカウンセリング、どうだったかを聞いてないんですか?」

『ああ・・・聞いてない。』


驚いた表情で俺を問い質した美咲。


「どうして?・・・ちゃんと伶菜さんに聞けばよかったじゃないですか。そうしたら、今、こんなところにはいないはずでしょう?」



確かに美咲の言う通りだ
伶菜が自分を求めてきた時
彼女に何があったのか
何が彼女をそうさせたのか
俺は冷静にちゃんと耳を傾けるべきだったんだ

まずそれをすべきだったのに

俺は伶菜溺れた
伶菜の本心を見抜くこともできていないうちに・・・・




「本当に何やってるんですか?日詠先生!!!!!!」

だからこうやって罵られても仕方がないよな


「私、戻ります。自分の患者さんが気になるので。」


伶菜を救うために自分の患者を任せてくれていた美咲。
そうやって協力してくれていたのだから見放されても仕方がない
明らかに俺の配慮が足りなかったのだから

そう溜息をつこうとした瞬間。




ガチャ!



ここから出て行こうとしているものだと思っていた彼女はカンファレンスルームのドアを開け、入り口で立ち止まったまま。

自分の配慮の足りなさを痛感し、ガッカリしていた俺は
美咲に何があったのかを聞きだすことができないまま
ただ彼女の後ろ姿を呆然と見つめることしかできなかった。


けれども



「ひとつだけ教えてあげます。」

『・・・・・・。』

「伶菜さんに依頼していた私の担当患者さん、カウンセリングに行ってみてよかったって言ってましたよ!それじゃ!!!」


後ろを振り返らないまま俺にそう教えてくれた美咲はなぜかドアを開けたまま薄暗い廊下の中へ消えて行ってしまった。



『上手く行かなかったんじゃなかったんだ。』


俺はてっきり
伶菜は今日のカウンセリングが上手くいかなくて落ち込んでいるものだと思っていた

それなのに美咲は
自分の担当患者が伶菜のカウンセリングを受けたことで手ごたえがあったと言っていたんだ




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