ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
「欲求不満で仕方がないって顔、してるわよ。」
『・・・・・・・・』
「そろそろ限界なんじゃない?日詠クンでも。・・・そうじゃないわね、あの日詠クンだしね。」
このタイミングで、どういう意味なんだと眉をしかめた俺。
そんな俺のほうへハイヒールの靴音をコツ、コツと小さく鳴らしながら近付いてきた奥野さん。
患者の急変に備えてローヒールを履く彼女の足元は珍しく。
唇の上にのっていた艶のある赤味の強いルージュも珍しくて。
明らかにいつもとは異なる雰囲気までも伝わってきた。
「いいわよ。内緒にしといてあげるから。」
そう言いながら、うっすらと乾いた笑みを浮かべ、更に近付いて、細長い指で俺の顎を掬い上げた。
顎を引き上げられた格好でも
彼女が何を考えてこんなことをしているのかをどうにか探ろうとしていた俺。
そんな俺を嘲笑うかのように
彼女の口元にうっすらと描かれていた弧は
更にクッキリとしたものに変化していた。
「こういう夜があってもいいんじゃない?お互いにオトナなんだから。」
『奥野さ』
どういうつもりなのかを奥野さんに問い質そうとしたのに
『・・・・・ん・・・』
俺は言葉を遮られるように唇を塞がれた。
『・・・・・・』
やや冷たさが残るその唇によって。