ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
「上等。そうこなくっちゃね。」
睨みをきかせたはずなのに
奥野さんは一切怯むことはなかった。
むしろしてやったりといわんばかりの笑みを浮かべていて。
『伶菜のコト、本当にカワイイと思っているんですね。俺を挑発してまで。』
「当たり前じゃない。臨床心理士になった伶菜ちゃんを喉から手がでるぐらい欲しかったわよ。あたしは。」
本当なら伶菜は奥野さんが異動した系列病院で従事するはずだった。
でも、俺がどうしてもウチの病院に欲しいと院長に頼み込んだ。
俺も産科医師と遺伝相談室の医師スタッフを兼務するのを条件に。
「これからは出生前診断が多様化してきている今、遺伝相談がより重要になる。だからどうしても彼女が必要だったのに・・・・」
『・・・・すみません。』
奥野さんも俺と同じこと考えてたんだな
俺達産科医師は新しい命をただ取り上げればそれでいいんじゃない
どんな新しい命でも尊いものでなくてはならない
それを守るためには
その命に関わる人達も守らなくてはならない
その人達のカラダだけではなく
・・・・ココロまでもを
だから臨床心理士になった伶菜が必要なんだ
まだ彼女は遺伝カウンセラーではないけれど
自分の命をないがしろにしようとしたくせに
祐希の命を守るために自分も生きることを選んだ
彼女の力というものが
きっとこれから新しい命を育む人達の支えになるだろう
そして何よりも
ココロに悩みを抱える人達の支えになりたいと頑張っている彼女の存在をすぐ傍で感じることが俺自身も頑張れる原動力になっている
だから伶菜が必要なんだ
「美咲からのワケがわからない電話を聞いて、いても経ってもいられなくて、こんな時間にこんなトコまで来ちゃったじゃない・・・」
『・・・・・・・』
「なんで、伶菜ちゃんを置き去りにするようなコト、するのよ!!!!!バカ日詠!」
『・・・すみません。』
「あたしに謝っても仕方ないでしょ・・・彼女の能力を潰したら、彼女を泣かせるようなマネをしたら・・・・日詠クンでも許さない。」
やっぱり奥野さんは本気だった。
その証拠が彼女の鋭い瞳。
「それに伶菜ちゃんにも嫌われるわよ。こんなズルい真似してると。」