ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
「そしてまた、あたしのところに来て。伶菜の主治医をやってくれ、ってね。」
『奥野さんに、ですか?』
「どうせ、日詠クンにはできやしないわよ、伶菜ちゃんの主治医は。伶菜ちゃんの前では医者じゃなくてただの盛りのついたオスになっちゃうんだから。産科医師失格!」
盛りのついたオス
確かに数時間前の俺はそうだったかもしれない
「そんなことないとは言わせないわよ。以前、伶菜ちゃんが一人目を妊娠した時、内診ができないってあたしに頼んだことあったでしょ?伶菜のは無理だって。」
『・・・・・・・・』
仕方ないだろ?
いくら仕事で女性のカラダを数多く診てるからって
スキな女のは無理だ
しかも
産科医師としての自分の技量にもまだまだ自信が持てていないんだからな
「でも、そうじゃなきゃ。血の通った人間らしくていいじゃない。スキだから無理って。」
『血の通った人間、ですか・・』
「そう。やっと出逢えたのね。日詠クンをその気持ちを抱かせる女の子に。」
俺に対して
何をすれば
何を言えば
俺が本気になるのかを
正確に把握しているこの人
悔しいけれど
この人には
この先輩には完敗だ・・・・
「もう大丈夫そうね。それじゃ、帰るわ。おやすみ。」
『おやすみなさい。』
お互いに小さく苦笑いを浮かべて別れた。
そしてカンファレンスルームに残った俺は奥野さんから受け取ったモノを手に取った。
そこからしばらくの間、俺はそれに神経を集中させた。
今度こそ本気になったから。
伶菜と一緒に前に進むために
自分がするべきことに対して。
でもそんな俺だったから
気がつくことができていなかったんだ
知らない間にこの部屋の灯りが廊下に漏れていたコトを・・・
そして
この後、思い知ることになる伶菜の
そして
俺自身の
いろいろな想いとかにも・・・・