ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
ナオフミさんの背中をちゃんと見ながら祐希は育っている
そう感じたと同時に
医師になりたいという彼の意思に戸惑いを覚えずにはいられなかった。
子供独特のあいまいな目標だとはわかっているのだけど。
素直に嬉しいと思えない自分がいた。
勤務している場所も同じ
帰る場所も同じ
なのに
ナオフミさんと私
なんでこんなにも
すれ違ってるんだろう?
“約束する”って
“お前だけに背負わせないから”って
“俺らのやり方で前に進めばいい”って
そう言ってくれたけど
彼が具体的に何を考えているのかを把握できなかった私は
目の前から彼がいなくなったことによって余計に不安になってしまう
夜中も懸命に患者さんや妊婦さんと向き合っているナオフミさんを労わる余裕もなくて・・・・奥さんという立場失格だとわかっているけれど
彼と自分はすれ違ってしまっている
そう考えずにはいられない
そんな想いに頭の中を占領されているから
医者になりたいという祐希の意思を嬉しいと思えない
親としてそんなことを思うのは親失格だとわかってはいるけれど
この時の私は自分のそんな情けないココロを上手く修正できていなかった。
「そう♪びょうきをなおしてあげて、いっしょにニコニコするの。」
『いっしょにニコニコ?』
「だってパパ、いっしょにニコニコしてたよ~。おなかが・・・ぼんってしてるおねえさんと。」
祐希は屈託のない笑顔でお腹が飛び出しそうなジェスチャーを見せてくれる。
おなかがぼんって出てるおねえさんって
祐希はナオフミさんが妊婦さんと話をしているところも見かけたのかな?
「おねえさん、ないてたけど、、、わらった。」
そんなナオフミさんの姿を見て嬉しそうに、彼みたいになりたいと口にした祐希に気付かされた。
「パパ、すごいね。おねえさん、わらったんだよ。」
ナオフミさんという人は私だけのものではないということ
いつでもどんなときでも必要とされる産科医師だということ
だから
物理的なすれ違いというものがあっても仕方がないということ
自分の中にある不安要素をどうしたらよいのかはやっぱりわからないままだけど
だからといっていつまでもクヨクヨしていられない