ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
昨晩、ナオフミさんとあんなことがあったのにもかかわらず、彼がいるかもしれない産科病棟へも朝一番に足を運んだ。
9時から開催予定のケースカンファレンスで取り上げられる産科のクライアントの情報収集をするために。
けれども情報収集するための資料が置いてある産科のナースステーション。
ついこの間、ナオフミさんとの結婚の事実を公表した場所であるそこへの出入りにはまだ躊躇する自分がいて。
「ねえ、ねえ、あの話、本当なのかな?」
「私もそれ、ついさっき耳にしたんだけどさ~。」
ナースステーションから聞こえてきた看護師さん達の声。
それらによってこの日もやっぱりナースステーション出入り口よりもやや離れたところで足を止めてしまった。
ただ、この時は
「あっ、谷本じゃん。あんた、今日、日勤だっけ?」
話をしていた看護師さんのひとりが発したその言葉。
それにより、私は谷本さんがナースステーションの奥にある仮眠室からに出てきたことに気がついた。
彼女とはついこの間、顔見知りになったばかり。
それでも、ナオフミさんと私の関係を理解してくれたであろう彼女の姿を遠目でも確認できたことによってナースステーションの敷居が少しだけ下がったような気がした。
それでもまだ私はナースステーションの中には入っていくことができないままその場で立ち尽くくしてしまう。
そんな私の存在に気がついていないのか彼女達は会話を続けた。
「はぁ~?冗談じゃないってば。あたしは準夜(勤務)だって。」
「なんで、まだいるのよ?もう8時半だよ。」
「だって~、院内看護研究会のプレゼン、昼休みまでに山村主任に提出しろってキツク言われてるもん。だから帰らずにそれやってたら今までかかったんだって。主任、提出しなきゃ何言い出すかわからないから死ぬ気でやったわよ~。おかげでコンタクトが目の中でパリパリしてヤバイって。」
そう言い、俯きながらコンタクトを外した谷本さん。
「ご愁傷さま~。帰って寝るしかないよね~・・・って、あんた、準夜だったの?」
ゴシゴシと両手で目を擦っている谷本さんのほうに向かって、彼女と話をしていた看護師さんはテーブルの上に身を乗り出しながら問いかけた。
「ちょっと~さっきも言ったでしょ?・・準夜だったって!」
「キレてる場合じゃないわよ、谷本~!!!!!アンタは見たの?」
「・・・・・・」
興奮気味の看護師さんとは対照的に
目をしかめながら黙り込んでしまった谷本さん。
「ちょっと谷本ってば~言いなさいよ~。」
「・・・・なんのこと、かな?」