ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
「ちょっほ~!!!!・・・たにもほ~おお。」
「仮眠室にあったプチどらやき、美味しいでしょ?」
看護師さんは目を白黒させながら口の中に放り込まれたらしいプチどらやきを噛み砕くのに一生懸命になっていた。
その姿を見ながら可笑しそうに笑った谷本さん。
「ハイ、どらやき食べたら仕事、仕事。506号室の根本さん、おっぱいが張ってつらいって言ってたから、乳腺炎かもよ~。」
「ちょっと谷本~!!!!」
「ハイハイ、506号室。」
「506に行く前に教えなさいよ~。キス女、あんたじゃなければ誰~?」
「どらやきじゃ、、話、逸らせなかったかぁ~・・・」
再び看護師さんに詰め寄られた谷本さんは苦笑いを浮かべる。
その表情によってナオフミさんが誰かと本当にキスしていたことを再認識させられた気がした私は・・・動悸のような胸の奥がズンズンする感覚に襲われた。
「さあ、谷本、そろそろ言いなさいよ!!!!例のキス女って・・・もしかして、美咲センセ~?」
美咲先生
そういえば昨日の夜
私と一緒にいたナオフミさんに緊急コールをかけてきたのは彼女みたいだった
ナオフミさんは午後11時頃に出かけて行ったその時間は準夜帯
しかも
過去に美咲先生とナオフミさんの関係を嫉妬したことのある私
昨日、彼らが廊下で一瞬だけ向き合った時でさえも・・・入りこめないようなそんな空気を感じてしまった
産科医師の先輩と後輩
だけどその関係のあいだに何があるのか詳しくは知らない
そんな私がほんの少しだけ知っている彼らの関係
それは以前、産科医師としてやっていく自信がなくなり、病院の屋上から飛び降りようとした美咲先生を間一髪で引き留めて、そして彼女を抱きしめたのはナオフミさん
・・・・そんな過去があったということぐらいで
そんな過去だけど
私にとって凄くショックな出来事だった
だからキスしていた女性が美咲さんかもしれないという看護師さんの推測を
私までも “そうかもしれない” と思ってしまう
でも昨日の夜、私のせいですれ違ってしまったナオフミさんがここで美咲先生とどう過ごしているかまで私がどうこう言う権利なんてないとも思う
無意識下だったけれど私は
彼とカラダを重ねることを拒んでしまったのだから・・・。
だから私はナオフミさんとキスしていたのが美咲先生だと確信したこの時
ココロとカラダがバラバラな状態だった昨晩の自分にガッカリするしかなかった。
でも
「違うわよ・・・・。」
そう呟いた谷本さんからはいつもの元気な
彼女の雰囲気が消えた。