ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



でもいつまでもそのままでいるのはもっとよくないと思った俺は、
自分と伶菜しか知らないモノにすがることにした。



それは幼少時、高梨のお袋が作ってくれたメイプルシロップ入りのホットミルク
俺の大好物のひとつ

俺が飲んでいる横にやってきてはそれを欲しがったまだ1才の伶菜に、スプーンですくって飲ませると彼女は嬉しそうに笑ったものだ

大人になって再会した伶菜にその笑顔を取り戻させてやりたい

・・・・そう思った俺は懐かしいホットミルクにすがることにした



通りかかった看護師さんに不思議そうな顔をされながら作ったそのホットミルクを作った。

そしてそれを入れたマグカップを伶菜に始めて差し出した時、
彼女は驚きを隠せていなかったが、その香りを鼻で受け止めたせいなのか、かすかに穏やかな表情を浮かべた。


それによって
それまで戸惑うことしかできなかった俺は
伶菜の傍にいて、自分のできることをしながら彼女を支えてやろう
・・・・そう心に決めた

その後の伶菜も胎児と一緒に生きようと頑張ってくれたんだ


その頃と同じように
前に進むために自分がしなくてはいけないことがはっきりした現在、
俺はまた、ホットミルクにすがることにした。

昨晩、本当ならば傍にいてやらなくてはならなかった伶菜を自宅に残したまま病院へ来てしまったひどい俺。

だから、その頃のように
また伶菜と共に歩んでいけるようにと願掛けをせずにはいられなかった。



『確か未開封のがあったはず。』


沢山のマグカップやコップが収納してある食器棚の奥に隠しておいたメイプルシロップを取り出し開封した。


『シロップを計るスプーン、伶菜にあげちゃったから、ないな。』


電子レンジで温めたミルクの中にメイプルシロップを目分量で落とし入れた。
その瞬間、漂う独特の甘い香り。


これを飲んで、さっきの作業の続きをしよう
それが終わったら、次は相談に行くんだ
早川室長のところに・・・


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