ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



これからの自分の予定を頭の中で組み立てながら口にしたホットミルクは
いつも飲んでいたものとはちょっと違うように感じられた。


『シロップ、足りなかった、か・・?』


もう一回、口に含んだ。
甘さも足りなかっただけでなく、かすかに苦味を感じた。


多分、さっき同じマグカップでコーヒーを飲んでいたせい。
マグカップをすすぎたりなかったんだな・・と振り返りながらもう一度、口にした。

再び感じたかすかな苦味のせいなのか・・・胸騒ぎがした。




けれども、俺にはやらなくてはならないことがあったから、とりあえずカンファレンスルームに戻った。

それでもまだそんな自分の邪魔をする胸騒ぎ。
それをなんとかしたいと・・と思った俺は机の上に置いてあったモノを抱えてカンファレンスルームを出た。
そうやって医局の自分のデスクに移動することで胸騒ぎから気を逸らすことにした。



その途中、産科病棟を歩いていた時、


「えっ?結婚したばかり、じゃなかったの?」

「そうだよ~もしかして偽装だったりして?!」


聞こえてきた看護師さん達の会話。
いつもなら、“よくわからない噂話なんだろうな” ・・って聞き流すのだが
胸騒ぎに揺れていたこの時に限ってはそれらが耳ついてしまった。



それだけではなく

「あっ、シー、聞こえちゃうって・・・」

「あっ、目が。」


臨床検査室に持っていくのであろう血液入りスピッツを持っている彼女達の視線まで感じ取ってしまった。


「お、おはようございますぅ~日詠先生♪」

「日詠先生、今日、早いんですね~」


少々慌て気味に挨拶をしてくれた彼女達に俺は会釈するのが精一杯だった。
そしてようやく辿りついた医局にある自分のデスクの椅子に腰掛け、さっきまでやっていた作業の続きに取り掛かった。

けれども集中しきれていない自分がいて。
デスクの引き出しに入れてあったミントのタブレットを6つまとめて口に入れた。
その直後だった。




「盗み聞き女、元気だった?」


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