ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
「今までいろいろあったんだね~。」
そう言いながら冷めてしまった緑茶を捨てて、新たに温かい緑茶を淹れてくれた。
私は全て語り尽くしホッとしたのか
差し出された湯気の立つ湯呑みを受け取ると今度はちゃんとそれを口にできた。
「でもさ~、伶菜さんはきっと悪くないよ。」
『・・・・えっ?』
「神様のイタズラっていうか・・・・・更に苦労する分、愛が深まるってヤツぅ~?」
『はいっ?』
さっきまでの神妙な面持ちをした谷本さんが嘘だったかのように
彼女はニヤリといたずらっ子のような笑みを浮かべた。
「日詠先生も大変そうだったよ~。伶菜さんがここに赴任してくる前は。」
『大変そう、ですか?』
「そうそう。私の知っている限りでは、日詠先生に告白した身の程知らずのオンナ達は全てバッサリとシャットアウトされてた。“ゴメン、付き合えない” の一言でね。」
そう言いながら谷本さんはプチどらやきを一口かじった。
「私や安田先輩はそういう状況を知っていたから、日詠先生のコトがスキでも告白するまでいけなくて。」
そういえば谷本さんの先輩の安田さんも
ナオフミさんのことがスキだって聞かされたことがあった。
「で、諦めの悪い他科の看護師とかは・・図々しく日詠先生の身辺調査したりしてさ~。付き合っている彼女がいないことを突き止めて、“欲求不満にならないんですか?”なんて本人に聞いちゃうツワモノもいて。」
『・・・・・・・。』
欲求不満?!
私はこの病院に赴任してくる前って
ついこの間ぐらいまでってことだよね?
自分は心理系大学院に入る1年前から
私はナオフミさんから離れた
それから約3年
ナオフミさんが誰とどういう関係があっても全然おかしくない
私だってその期間
何もなかったって言ったら
嘘になるし・・・・
だから
ナオフミさんにとって
欲求不満とか
そんなのはなさそう
っていうか
奥野先生とあんなことがあったのは
昨日ってぐらいだし・・・
「そんな顔しないで下さいよ~・・伶菜さんってば!!!!」
『・・・・・すみません』
少し困った表情を浮かべながら笑ってくれた谷本さん。
「でもね、すぐ傍で従事している私達はちゃんと知ってるから。」
『ちゃんと、、知って、、、る?』
「そうそう・・・・・日詠先生が男の本能を満たしたいという欲望を抱く時間がないぐらい妊婦さん達に寄り添って、そして絶え間なく学ぼうとしていたことを。」
そこまでナオフミさんのことを見てきていた谷本さん。
彼女はきっとナオフミさんという人を誤解したりしない
・・・そう思った。