ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活


「そう?昨日の夜中、出勤してきた時も彼女の香りがそこらじゅうから漂ってたけど?」

『・・・・・』

「一歩手前で、コールしちゃった?」

『・・・・・』


わかってるなら、ほっといて欲しい・・・

でも福本さんは

俺が産科医師を目指すきっかけとなった
伶菜の父親でもある高梨拓志という人物の傍で助産師として従事してきた人
白衣姿の彼の背中を夢中で追いかけていた、まだ小学生だった俺のコトもよく知っている人
彼の娘である伶菜のことを自分の娘ぐらいに思っている人


だから伶菜も福本さんには絶大な信頼を寄せている





それだけではなく福本さんは
幼い頃の俺と伶菜の関係も知っている
ほんの短い期間だったけど
俺と伶菜は血の繋がっていない兄妹関係にあったってコトも

だから
なんだかんだ言っても福本さんには逆らえない
俺も福本さんの仕事ぶりには一目置いてるし・・・




「ヤる一歩手前ってやつよ、山村さん♪」

ニヤリと不気味な笑みを浮かべた福本さん。
周囲もなんか異様な雰囲気のような。


なんかイヤな予感がするのは
俺の気のせいか?



「あの~日詠センセって、カノジョ・・いるんですか?」


どうやら気のせいとかじゃなくて
俺は福本看護師長と山村主任の話に耳を傾けていたらしい看護師さん達に囲まれた。
身動きがとれないぐらいの距離で。

この病棟の看護師さん達は
業務が過酷なせいもあってか入れ替わりが激しい

その度になぜか看護師さん達からは今みたいに“彼女いますか?”とか“女性のどんなしぐさがスキですか?”とか聞かれる

そんな話題で声をかけてもらわないといけないほど
俺って話しかけにくいのかなって思ってしまうと
この場をどう切り抜けていいのかわからなくなる


『・・・・・』

だから、黙って彼女らの様子を窺うことしかできない俺。

「えーいるでしょ?いないほうがあり得ないでしょ!」

「カノジョなら、別れる可能性充分にアリですよね?アタシ、まずは二股からでもいいで~す!最終的に妻という立場に落ち着けばいいので!ね、日詠センセ♪」

「ちょっと~妻の立場って、どんだけ前向きなのさ~」


二股からでもいいなんて、そんな冗談まで言わせてしまうぐらい
俺は彼女達に気を遣わせてるのか?
まあ、業務以外で、自分からプライベートの話とかすることないからな
話しかけにくいかもしれないな・・・

でもこれだけ頻繁にプライベートなことを色々聞かれると、正直、返答に困る
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