ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活




クライアントの白川さん
ナオフミさんが主治医である妊娠20週の妊婦さん
35才、5才の女の子の母親

第1子出産後、第2子になかなか恵まれず、不妊治療を経て双子を妊娠した
その双子がTTTS(双胎間輸血症候群)を罹患している可能性があるらしい


ナオフミさんからは
TTTSの疑いがあることは説明してあること、そして、TTTSの治療方法をご本人やご家族の意志を尊重して選択できるような支援をして欲しいことについてだけ聞いていた

どんな性格のクライアントさんなのか
それについてだけは敢えて聞かなかった
余計なことにとらわれることなく白川さんと向き合いたかったから



『お腹、張ったりします?』

「ええ、かなり。この中にふたりも入ってますから。」


穏やかにそう答えて下さった白川さん。


『臨床心理士の日詠、、、伶菜です。気分が悪くなったら遠慮しないでおっしゃって下さいね。』

「わかりました。宜しくお願い致します。」


いい慣れない苗字を口にした私と向き合う形となった白川さんは軽く会釈をして椅子に腰掛けた。
そして彼女は私をじっと見つめる。
その瞬間、私の頭の中が真っ白になってしまった。

彼女・・・白川さんの瞳があまりにも真っ直ぐで
ここを訪れる人には見かけられないようなその瞳
力強さまでもを感じた。



「伶菜先生?」

『あ、、はい、、、すみません。では、早速始めましょうか。』

「お願いします。」


私のほうが動揺してしまっているように感じられるぐらい、彼女は落ち着いていた。
自分とお腹の中のお子さん達が置かれている状況をちゃんと理解されていて。
ナオフミさんからも現在の状況と今後の治療方針などをご主人同席で丁寧に説明されていることも話して下さった。

期待が高まるような治療についての説明だけでなく、
障害を抱えて産まれてくる可能性もあるとか、手術中の死や死産など最悪の状況もあり得るということも聞かされたことまでも。


それでも

「私はどうしたいのか、もう決めているんです。でも・・・」

彼女はかすかに涙声になりながらもハッキリとこう口にした。



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