ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



意志が固そうだけど、
それでも私は “でも” の言葉の続きを待った。
“でも” の後には
重要な事柄が隠されているはずだから。


「伶菜先生、私、、、上手く言い表せられないんですけど、、、、」

と彼女は言いながらも丁寧にその状況を打ち明けて下さった。

まだ見ぬ弟か妹達の誕生を楽しみにしている長女
五体満足が当たり前で、もし障害を持って産まれてくるならその子達もかわいそうと訴えているらしい白川さんの姑
姑の考え方に戸惑うも、母体も高齢であるので無理はさせたくないという考えを持つ白川さんの夫は中絶という方法も視野に入れているとのことで


「でも、私は産みたいんです・・・この子達を・・・・だから、日詠先生の治療を受けたいんです。」

白川さんはそう言いながらお腹にそって手をあててずっとこらえていた涙をこぼした。


ナオフミさんが難しい症例と言った理由がわかった。
早川室長からも彼が “自分だけではどうにもならない” と言ってたとこっそりと教えてもらっていたし。


家族間での価値観の相違

・・・・それがベースにあるから・・・・



白川さんの気持ちのみを尊重して、治療を強行して、もし胎児達にもしものことがあったら
家族間での関係が壊れてしまうかもしれない

かと言って
家族の意見を受け入れて、中絶という選択をしたのならば
白川さんの気持ちを置き去りにすることになる

どちらを選んでも
おそらくベストな選択にはならない


こんな状態で
私が家族の誰か、もしくは白川さんを説得したとして
治療を受けても
中絶を選択しても
・・・きっと家族みんなの心に傷がつくだけ



私がするべきことはきっと

白川さんだけでなく
家族の想いにも耳を傾け
皆でお互い想いを共有できるように
お手伝いすること

今後、どうするかの選択を急かすのではなく
白川さん達自身で前向きにちゃんと選択するようにお手伝いすること
・・・多分、それだ



『白川さん、お願いがあります・・・』



そして私は
はじめの一歩を踏み出すことにした。


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