ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



その笑顔に安心した俺は躊躇うことなく、差し出されたそのメロンパンをかじった。

『甘い、な。でも、コレなんだよな。」

「私もメロンパン、スキ。」


メロンパンがスキなんだ
それにも負けないぐらい伶菜のことがスキなんだ

俺が今、中学生だったら
まっすぐにそんなふうに言ってやれるんだろうか?

そうしたら
伶菜も今の彼女と同じように
“私も”って即答して欲しい

まぁ、そんなお願い
やっぱり恥ずかしくて口にはできないけどな


『今度、休みが取れたら、海老名まで食べにいくか?あのメロンパン。』

「賛成。」

そう応えてくれた伶菜は俺がかじった後のメロンパンを嬉しそうに食べた。


「あっ、しちゃった・・・あたしも。」


しちゃったって?



『どうした?』

「・・・・間接キス。」


いかにもわざとらしく聞こえたその言葉。

それなのに
“あたしも” という声に密かにドキリとした。


中学生でないもういい年のオトナになっているはずの俺なのに。
俺の密かなお願いが伶菜にも伝わっている
勝手にそんなことまで想ってしまった。



『メロンパン、ついてるぞ。』


うっかりニヤケてしまいそうな自分を隠すために、伶菜の口元に手を伸ばした。
本当は何もくっついてなんかいない彼女の口元に。

でも伶菜に俺のわかりやすい嘘は通用しなくて。

俺の気持ちをいとも簡単に読み取ってしまうことができるようになった彼女は
小さく微笑みながら目を閉じた。


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