ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



私よりも先に白川さんの旦那さんを見つけた彼は
白川さんの旦那さんをしっかりと見つめながらゆっくりと頭を下げた。

「どうか、どうか家内を宜しくお願い致します。」

そう言ってから白川さんの旦那さんもナオフミさんのほうを向いて深く頭を下げた。
彼が頭を上げるまで立ち止まっていたナオフミさんはもう一度会釈をした。

すぐさま感じた視線。
ナオフミさんと目が合った。

それからどれくらい経ったんだろう?
自分でも覚えてないぐらい
ナオフミさんと私はじっと見つめ合った。



迷いなんかもう感じられない真っ直ぐな瞳

想い出した
私がもう消えてしまおうと電車に飛び込もうとした時に
自分に向けられたあの時と同じ


“俺が助ける”

“俺がやるんだ”


自分自身が混乱していたはずのあの時、
そう強く感じた彼の瞳
その時はそんな彼に寄りかかることしかできなかった自分だった


けれど今は


『待ってます。ずっと、ここで。』

「ああ。ご家族のこと、頼むな。」

『ハイ。』



彼の隣に自分の足で
ちゃんと立っていられるようになりたい
そう思う

そして
小さく微笑んで頷く彼に、満開の笑顔で頷き返し、
手術室に向かう彼の後ろ姿を真っ直ぐに見守っていられるようになりたい


私はこの瞬間、手術室に向かう彼らの背中を見つめながらそう願った。



ウイーン・・・・

手術室総入り口の銀色の扉が開いた音がして。
そしてナオフミさんは先に手術室入口から中へ入って行った白川さんの後を追うように彼も手術室エリアへ歩みを進めた。


どうか
白川さんがお腹の中の双子の赤ちゃん達とともに
手術室から元気に戻ってこれますように

どうか
ナオフミさんの全てをやり終えた後のホッとした表情を
この目でみることができますように


私は閉まった手術室の扉を見つめてそう祈った。



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