ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
そんなことを思い、手術の準備に対して更に気持ちが入った。
準備は夜遅くまでかかり仮眠も3時間程度しかできずに朝を迎えた。
それでも体は軽かった。
しっかりと準備できたという手ごたえが大きかったのだろう。
それだけでなく
手術室の入り口で見つけた伶菜の姿に
「待ってます。ずっと、ここで。」
彼女のそんな言葉に
そして
彼女が俺に向けた心が溶かされるような笑顔によって
俺の中の不安はほとんど消えてしまっていた。
そのせいか、各手術室間を繋ぐ廊下を進む足取りも軽くて。
「今日、難しいオペ(手術)、するんだって?」
マスクを外しながら汗びっしょりの手術着姿で俺の前に現れた森村に声をかけられた。
どうやら、緊急手術を終えた後らしい。
『まあな。』
「それにしちゃあ、余裕そうじゃね?」
『そうでもないさ。』
「ふーん。それじゃ・・・」
森村にしては珍しくあっさりと撤収しようとした。
・・・・かと思ったら今度は帽子を外して
「日詠さん、伶菜、変わったな。」
『・・・・・・・・・・』
変わった?
森村らしくない真面目な口ぶりに
俺は拍子抜けして返す言葉が見つからない。
「ただ強いだけじゃなくて、なんて言ったらいいのか・・・包容力って言うのか・・・・そんなもんまで感じられるんだな~。」
額の汗を拭い、そう口にした森村。
さすが・・・だな
伶菜が苦しんだ時も
主治医としてずっと彼女を診てきた男
そして
嫉妬するという感情を
初めて俺に植え付けた男の言葉は
・・・・・俺も感じていたことだった。
「日詠さんが彼女をそう変えた。」
『・・・・・・』
『そして、日詠さんも変わった。ありのままの自分を見せてもいい・・そんな場所を見つけたんだな。』
『・・・・・・』
「羨ましいけど、楽しみなんだな~。そんなふたりの化学反応ってやつが・・・」
いつも自分中心に世界が廻っているような態度の森村が紡ぐ言葉に驚きすぎて返答ができない俺。
森村はそんな俺に親指を立てて笑った。