ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
なぜか上目遣い気味な彼女に逆に煽られた。
昨日から今朝にかけて久しぶりにゆっくり休ませてもらったから
仕事を休むつもりはなかったのに。
『休んじゃうか、な。』
彼女のせいで俺のその計画はゆらゆらと揺れ始めた。
それぐらい今のこの時間は簡単に手放すことができなかった。
でも、そんな俺を引き上げるのはやっぱり
「駄目です。患者さん、待ってますから・・・」
『・・・でもな』
腕の中で少々困った表情で俺をじっと見つめた彼女。
彼女の言う通り、容体が気になる患者がいると思うと
簡単に休むわけにはいかないという想いにようやく意識が向き始めたその時
「じゃあ、今日頑張るご褒美を先に」
『・・・・待て!!!!! 伶菜?!!!!!!! おいっ!!!!!!』
俺は自分の上に跨った彼女の突然の行動によって
その意識をあっさり掻き消されてしまった。
こうやって2日連続彼女にノックアウトされた俺。
でも、彼女によってもたらされた甘いご褒美によって充分に満たされた心を携え仕事に向かうことにした。
『おっ?』
医局のロッカーでスクラブ(手術着)に着替えた際、
鎖骨の下に赤い跡が残されていることに気がついた。
苦笑いしながらロッカーのドアの裏側に取り付けられている小さな鏡を見ながら襟元を一応確認した。
『伶菜だな。』
記憶を辿っても、キスマークをつけられた覚えがない自分にとって
この小さな鏡で襟元を確認するという行動はおそらく初めてで。
『キスマークのお返しとか・・・するなら、もっと大胆にやってもいいのに。』
薄く赤味を帯びた部分に触れると昨晩から今朝のことが鮮明に頭に過ぎった。
甘いあまい記憶の跡が今日の俺の背中を押してくれる・・・こんなことも今までなかった。
俺も伶菜をこんな気持ちにさせてやれたのだろうか・・・
そんなことを考えながら廊下を歩いていたら
突然、左腕を強く引かれ、階段の踊場につながる柱の影に引きずりこまれた。