ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
『お前、相反しているよな。』
「仕方ないさ。」
森村は柱にもたれかかって腕組みをし、不機嫌さをアピールしたかったためなのかわざとらしく顎をグイッと上げた。
俺のことを先輩と呼びながらも
どっちが先輩だかわからなくなるようなその格好に
俺は相変わらずな奴だと心の中で溜息をついた。
でも、そんな森村の存在は決してないがしろにはできない
多分、この男は
伶菜のことを伶菜以上に
そして
俺のことを俺以上に理解しているに違いないから
『何で?』
だから、俺はスルーし切れず、
この男の想いにも耳を傾けてしまうんだ
「どういう形であれ、大切に想う人間の願いが叶ったという事実を知ったから・・とりあえず安心したってとこ。」
森村にとっても伶菜は大切に想える存在
そんな存在の願いが叶ったという事実とは
おそらく彼女が俺に抱かれたということなんだろうけど
その事実を知って安心するなんて
どこまで伶菜のことを想っているんだろう?
「でも、まだ安心しきれないんだよな~。」
“伶菜に対して中途半端なことは許さない”
そういうことなんだろうな
でもその想いは
伶菜を大切に想っているだけからでなく
俺の性格を見透かした上での忠告なんだろう
「オレが完全に伶菜離れするには、アンタが乗り越えてくれないとな~。」
『俺が・・・』
「そう。今の俺の心は複雑だけど、レイナはとうとう壁を這い上がった。でも・・・・」
森村は腕組みしていた両手を白衣のポケットに突っ込んで
もたれかかっていた柱から勢いよく体を起こした。
そしてさっきまで下がり気味だった彼の両瞼が強く開いた瞬間
彼が核心をついてくると感じずにはいられなかった。
そして俺の予感は的外れではなかったようで
「日詠さんがこのままだと・・レイナの主治医である俺は安心して伶菜離れができないってこと。」
彼はそう言い放った直後、パタパタと手術室用のスリッパで床を擦り付ける音を立てながら立ち去ってしまって・・・・
核心をつかれた俺に弱音を吐かせてくれる機会すら与えてはくれなかった。