ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
着床出血
その症状を表す言葉は
祐希を妊娠した時、親友の真里が一応読んでみる?と持ってきてくれた妊婦雑誌の中で見たことがあった
それは受精卵が子宮に着床する際に起こることがある出血
着床した受精卵がそこでそのまま生き延びれば妊娠へとつながる
それが子宮の中で起こっているというしるしとも取れる出血
てっきり5週間前の出血は月経によるものと思っていた
思い返せば、通常の月経量よりもはるかに少ない出血で
それは生理不順だととらえていたからあまり意識することがなかった
気分が悪いなどの悪阻症状もなかったし
『・・・・・・』
こうやって考え込んでいた私を安心させようとしたのか
目の前にいる先生はニッコリと笑いかけてくれる。
「昼間みたいな腹痛、まだある?」
『今はないです。』
「とりあえず、まだ妊娠したとかわからないけど、もしものことを考えてウチの病院ではアレルギー検査のみに留めておこうと思うけど・・・それでも大丈夫?」
「・・・ハイ。」
先生はまたパソコンのほうに向き、再びカチャカチャとキーボードで入力しながら、彼女の背後にいた看護師さんへ採血の準備をするように依頼した。
急に慌しくなった診察室。
電子カルテに入力し続ける先生と
注射器と数本のスピッツ(採血した血液を入れる容器)を載せた銀色のトレイを手に持ったまま、私の目の前に採血する腕の載せる台を差し出す看護師さん。
患者である私は彼女らの動きをただぼんやり眺め、
採血するために腕を台にのせ、手指をぐっと握るように促されれば、その通りにした。
エタノールを含んだ綿で腕の一部をふき取られ、針が腕に刺さった瞬間、つい顔を歪めてしまった。
その跡、指先に痺れがないかを聴かれ、首を横に振り
そして針が差し込まれた部分に貼り付けられた止血用テープを反対の手でぐっと押さえた。