ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
「ムカつく。マネすんな~」
『は?』
突然、バインダーで頭をはたかれた上にムカつく発言を浴びた俺は何がなんだかわからない状況でジンジンとし始めた頭頂部(頭のてっぺん)にそっと触れた。
ほぼ徹夜の頭にはちょっと刺激が強い。
「だって、そういうとこ、高梨先生にそっくりなんだもん。」
そういえばこの人
ウチの病院の産科医師だった伶菜の父親に憧れていたよな
病棟の歓送迎会とかで酒に酔った勢いで
“高梨先生のことダイスキだったんだよね~あたし” って何度も聞かされたし
「でも、伶菜ちゃんはこういう真面目なダンナで幸せだよね!忙しすぎるっていうのがちょっと残念だけど・・・」
『どうだか。』
「本人も言ってたもん。私にはもったいないぐらいな人だって♪・・・あっ、そういえば・・・」
伶菜の真似をしている福本さんよりも
今度は彼女の右手で持ち上げられたままのバインダーの行方を気にしていた俺。
まだジンジンしている頭にもう一発はキツイ
そう思いながら彼女を軽く睨み付けた俺。
でもそれに怯むことなくギロリと睨み返してきた福本さん。
「伶菜ちゃん。気がついてなかったみたいよ。」
『へっ?』
福本さんが話し続けている”伶菜についての話題のベクトルの向き”が急に変わったことは徹夜明けの俺でも容易にわかる。
だからバインダーの行方を気にしていた俺でもさすがに
福本さんのその言葉は聞き逃せなかった。
「ナオフミくんは気がついてた?」
さっきのような俺をイジる態度ではなく
部下の看護師さんに声をかけているような福本さんの雰囲気に
きっと只事ではないんだと悟った。
『何を・・・ですか?』